こんにちは!
一般社団法人 生産、物流現場カイゼン研究会 中国支店の宇賀です。
https://a.k3r.jp/a_sol/37137C59340E28
今回は
Q&Aコーナーということで
普段、お客様からの返信や
お悩み相談として寄せられる困りごとの中から
特に数の多かった
「再発防止がうまくいかない。。」
についての相談を取り上げます!
■ご相談内容
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「当社の中国工場では不良品、設備停止、部品不足などが起因して
生産が止まってしまいます。
現場も、生産を止めないために懸命に
その原因を探し対応できているように見えるのですが
数日するとまた同じ内容の問題が起こり
また対応するといった具合で進歩が見えません。
その分残業で対応しているので未納までにはなっていませんが。
そこで、
製造部に再発防止シートの作成(原因と対策の記入)
を義務付けたのですが
やはり同じような問題への対応が起こっているように見え、
なかなか改善が見られません。
問題が起こることは工場なので当たり前だと思うのですが
何かうまく再発防止できるような方法はないでしょうか?」
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日本でもよく起こる問題なのですが
中国に来てからよりご相談いただくことが多いです。
①処置と対策の違い、中国の現場の仕事の定義
②問題解決力不足とそれを補うルール
③製造現場のみが問題解決するという誤解
この流れに沿って
日本と中国の違いも含めて話していければと思います。
①処置と対策の違い、中国の仕事の定義
問題が起こったときの仕事の進め方として
処置と対策の2種類があります。
処置は通常の生産に復帰させること。(生産量確保)
対策は真因を見つけ再発しないようにすること。
(再発防止)
例えば
設備に異物が入ってしまい停止した際に
処置は、異物を取り除き生産を再開させること
対策は、異物が今後入らないようにすること
(カイゼン=原価低減)
となります。
この2点はどちらも大事なのですが
トヨタでは現場の仕事は
納期を守った生産量と品質の確保と
原価低減なので
処置と対策、
両方が終わって初めて
仕事をしたことになります。
しかし
中国の現場は
納期を守り、生産量を確保することまでが
仕事という認識が多いです。
処置までは普段の仕事として慣れていますが
生産量さえ確保できており、未納を出していなければ
問題ではないし、仕事はできているということです。
仕事の終わりの定義が違うことが
一つ大きなギャップとなります。
②問題解決力不足とそれを補うルール
仕事の定義に違いがあることを踏まえたうえで
再発防止シートを導入して、
仕事の終わり方を揃えたとします。
しかし、
そこに記入された内容は
今までもやっていた処置を
そのままシートに言語化しただけのものとなるはずです。
(処置と対策の違いが分からない)
先ほどの例で言うと
真因 異物の混入
対策 異物をブラシで取り除く
という再発防止シートになってしまいます。
本来、
再発防止をするには
問題に対して要因解析をし(なぜなぜ分析)
真因を見つけそれをつぶして初めて再発しないための
対策となります。
問題解決(カイゼン=原価低減)を
今まで仕事としてしていなかった現場にとって
当然、やり方も分からないし
力もついていないので、できないのです。
なので
問題解決やなぜなぜ分析の教育をしたうえで
再発防止シートのフォーマットを作りこみ
問題解決のステップで
しっかりとしたなぜなぜ分析ができるようにします。
そして出すべき対策もルール化します。
1.発生への対策 発生原因をつぶす対策
2.流出への対策 なぜ後工程まで行ってしまったかへの対策
3.停止への対策 なぜ悪いものを作る時に設備は停止しないのかへの対策
4.復帰への対策 停止してから通常に戻るまでもっと短くできないかへの対策
として対策の種類も決めていきます。
③製造現場のみが問題解決するという誤解
あるべき論を詰め込んだフォーマットを作り、
ルール化するところまでしましたが、
再発防止というのは
問題解決であり、原価低減そのものです。
現場だけに任せる仕事ではありません。
技術員、品管、購買部、生産管理等が関わり合い
能力不足を補いあいながら対策することが必要です。
もちろん
トヨタは現場が強いことが有名で
問題解決の手法も熟知した管理監督者もおり
何でも解決しているように見えますが
問題解決は上司とのマンツーマンの指導や
QC活動の中で、練習、失敗をしながら身に付けてきたものです。
新人への講義もありますが、それを聞いたからすぐできるのではなく
仕事として繰り返し行ってきた結果です。
そんなトヨタの現場でさえ
問題が起こると設備課、技術員、品管に問題を共有しながら
問題解決、再発防止を作り上げます。
(もちろん現場だけで対策まで出せる問題もあります。復帰への対策などは、製造部が考えないといけません。)
ましてや
中国で問題解決の能力がない現場に
ルールとフォーマットを作ったから
この通りやってみてと言っても
やはり、うまくいかないのです。
(うまくいかないし、面倒なので最悪は問題を隠すようになってしまいます)
加えて
中国製造業の組織体制、人材配置を見てみても
製造部はずっと作業者を続けてきた人が課長までになっていたり
部長からは、大卒の人を取ってきた人であったり
現場と管理者に能力的にもかなり差があることが多いです。
その中でも
問題解決能力に理解のあるのは
品管や技術、ひいては間接部門の人の方が教育レベル的にも
高い人が配置されていることがほとんどです。
なので
処置や問題を見つける部分は現場(製造部)で担えるのですが
対策を出すというステップは
問題解決能力が少しでもある他部門とチームになって
出していくことが必要になってきます。
問題を見つける、処置をする、終わりでなく
対策を出すステップは別の仕事として
チームで時間を取り、考えるという仕事の時間を設定することが必要なのです。
(他部署の能力のある人たちの知恵を借りる、問題解決になれる時間を取る)
ここを飛ばしてしまい
製造部に対策まで期待すると
やはり処置までで終わってしまい、
間接業務が増えただけとなり、続かないとなってしまうのです。
なので、はじめは
製造部は処置し、問題を書き残しておくと(リストを作る)
他の部署が解決を手伝ってくれるらしい(楽になる)
というくらいのイメージで
問題を見つけるメリットを理解してもらい
チームで時間を取って解決する仕組みを取り入れる
というのがやりやすいと思います。
まとめると
・対策、問題解決を製造部の仕事として定義する。
(対策に充てる時間というリソース確保と教育
そして評価項目(KPI)を作る)
・処置と対策の違いを会社として明確にする。
問題解決の方法の理解と教育
・フォーマットを決める
再発防止の問題解決ステップにそったフォーマットで
記入するだけの状態にする
・問題解決のチームを作る(製造部だけでないチーム)
製造部以外にも責任を持たす
・1週間に1回でも良いので定期で発生した問題に対しての
対策を出す会議、時間を取る
(トヨタでは朝会、weekly会議がその時間となっている。出席する役職も決める)
・製造部だけではない、共通の目標を決める
問題は常に起こっているはずなので、対策まで終わるという件数を
チームごとまたは会社として決める。他責にならないKPI設定。
そこまでやって
再発防止=問題解決というのが
当事者の中で、仕事になっていき、こうしなければいけない
こう進めるというのが、他部署や上司に指導されながら覚えていく土台ができます。
再発防止は
見る目のある人と一緒にやらなければ
いつまでも経ってもうまくならないので
製造部の能力不足を組織でどうカバーするように設計していくか
という話をしてきました。
長くなりましたが
最後までお読みいただきありがとうございました。
PS
昔から
当たり前になっている仕事の進め方や制度、組織の中では
なかなか変化も起こりません。
どんな会社でも
違う当たり前を持っている人が来たときに
新たな視点、方向に気付くことが初めてできます。
8月はあと1社、
現場無料診断を実施しておりますので
外部の目として使ってくださいね。
(課題抽出と今後の作戦作り)
また、
中国の製造業で
カイゼン活動が根付かなくてお困りの方は
お気軽ご相談ください。
ありがとうございました!
一般社団法人 生産、物流現場カイゼン研究会 中国支店
現場カイゼンサポートチーム 宇賀 邦人
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